津島毛織工業組合
  ウールと文明  
8000年前から人類の身近に羊がいた
羊が家畜化されたのは、今から8000年前というのが定説です。中央アジアのチグリス・ユーフラテスの両大河の恵みの上に栄えた古代オリエント文明は牧羊発祥の地でもあります。太古から自由に野山をかけめぐっていた野生羊を捕獲するのは石器時代の人々には相当苦労であったと考えられます。しかし、羊を数頭飼い慣らせば他の野生羊が次々と群に加わってくることに羊飼いたちは気がついたのです。そして、財産の羊を守る補佐役として犬を飼い始めます。今日でも人間にかわり羊をコントロールしているのは牧羊犬です。牧羊によって古代の人々の生活の合理化が進められます。 8000年前から人類の身近に羊がいたイメージ
▲ 石器時代の古代羊と羊飼
 
紡ぐ・織る、技術の発明
紀元前3000年頃には、シュメール人は既に毛織物の原型をつくっています。「短い繊維を平行に並べ撚りを加えることにより適度の強さを持つ糸を紡ぐ」という構想は、「火を熾し使う」ことの発明とともに人類の画期的な発明であるといわれています。5000年前には、「糸を紡ぎ・織る」技術が発明され、また1 年ごとに羊から毛を回収できることに気づいた古代人は遊牧から沃野へと定着、牧羊を始めます。紡織技術の発明や羊牧は、古代の村や町づくりに大きく貢献していきます。 紡ぐ・織る、技術の発明イメージ
▲ ギリシャ時代の糸紡ぎ
 
ウール王国イギリスの誕生、
手工業から機械工業へ

近世の機械化による大量生産時代の口火を切ったのはイギリスです。それまで、原毛の生産国であったイギリスは国家的事業として羊毛工業に力を入れます。ヘンリー七世からエリザベス一世と続く時代には、イギリスは羊毛帝国としての比類のない実力を備えるようになります。これが、七つの海を君臨する大英帝国の基礎となったのです。
17世紀に入るとイギリスのジェームス・ハーグリーブスが「紡績機」を、またジョン・ケイが「飛杼」を発明します。何千年も続いた手紡ぎ、手機に代わるイギリス羊毛産業革命の幕開を告げる重大な発明でした。また、ジェームス・ワットが蒸気機関の改良に成功し、リチャード・アークライトが水力紡績を発明します。近代羊毛工業の体制がここに出揃い、家内工業から機械化工業システムへの変革が急速に進みます。イギリス、フランス、ドイツ、ベルギーなどヨーロッパ各国羊毛工業は産業革命の進展とともにイギリスの梳毛織物、イタリアの紡毛織物、ベルギーの絨毯のように国際分業の道をたどり特産品が登場します。しかしイギリスでは、羊毛加工のために導入された新しい機械は、しだいに綿を加工するために使用されるようになり、イギリスの羊毛産業は綿紡績にその座を明け渡すようになります。
ウール・ロード

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